「私たち」はベトナム語で?
Chúng tôi / Chúng ta(チュン トイ/チュン ター)の使い分け

「「私たち」はベトナム語で?Chúng tôi / Chúng ta(チュン トイ/チュン ター)の使い分け」はベトナム語で

Chúng tôi

チュン トイ —「チュン↗・トイ→」と、前を軽く上げてから後ろを平らに

聞き手を含まない「私たち」。相手も巻き込んだ「私たち」なら Chúng ta(チュン ター) に入れ替わります。

「私たち」はベトナム語で?Chúng tôi / Chúng ta(チュン トイ/チュン ター)の使い分け

日本語の「私たち」は、相手が入っている場合も入っていない場合も同じ一語で済みます。ベトナム語はここを言葉のかたちで区別する言語で、聞き手を含まない私たちが Chúng tôi(チュン トイ)、聞き手も含む私たちが Chúng ta(チュン ター)です。旅行者がいちばん出番の多いのは前者ですが、その境界線を知っていると、ガイドや現地で知り合った人との会話の温度が一段変わります。

現地の人に伝わる発音のコツ

どちらの語も前半の chúng は共通です。Wiktionary のハノイ発音表記は [t͡ɕʊwŋ͡m˧˦]。末尾の ˧˦ が上げ(サック声調)なので、「チュン」を軽く尻上がりに出します。

つまずきやすいのは語末の -ng のほうです。表記は [ŋ͡m] で、軟口蓋の「ン」と同時に唇を閉じる音を表します。日本語の「ン」で終わらせるのではなく、「チュン」と言い切った最後に口をぱたんと閉じるイメージ。これだけで一気に現地の響きに寄ります。

後半は語によって変わります。tôi の表記は [toj˧˧]、ta は [taː˧˧]。どちらも ˧˧ =ンガン声調(平ら)で、高さを変えずまっすぐ出す音です。前半だけ上げて、後半は真横に線を引く。この二段構えがそのまま chúng tôi / chúng ta のリズムになります。ta は [aː] と長音なので、「タ」ではなく「ター」と少し伸ばすと通りが良くなります。

北部(ハノイ)と南部(ホーチミン)の違い: 語彙も使い分けの原則も南北共通です。差が出るのは音の細部で、サイゴンの発音表記は [cʊwŋ͡m˦˥ toj˧˧]。頭の子音が [t͡ɕ] から [c](硬口蓋破裂音)に変わり、サック声調も ˧˦ より高く鋭い ˦˥ になります。なお Wiktionary は chúng tôi・chúng ta とも「北部では日常的に、他方言では改まった場面で」使う語と説明しています。南部の日常会話では、後述する tụi mình などの口語形のほうが耳にする機会が多くなります。

「私たち」の使い分け早見表

判断の軸はひとつだけ、その「私たち」に目の前の相手が入っているかどうかです。

フレーズ 読み 聞き手 使う場面 音声
Chúng tôi チュン トイ 含まない 店・窓口・自己紹介(旅行の基本形)
Chúng ta チュン ター 含む 相手を誘う、一緒に何かする
Chúng mình チュン ミン 含む 親しい相手と(やわらかい)
Bọn mình ボン ミン 含む 北部の友達同士の口語
Tụi mình トゥイ ミン 含む 南部の友達同士の口語

chúng は複数をつくる要素で、そこに一人称がくっついて「私たち」ができます。chúng+tôi(私)、chúng+ta(自分・われ)、chúng+mình(自分)という構造です。同じ作りで、年下の立場から目上に向かって言う chúng em、孫や甥姪の世代が年配の人に向かって言う chúng cháu もあります。

bọn と tụi はどちらも「連中・一団」を指し、そのまま複数化の役目も果たします。Wiktionary は bọn を北部では口語的またはぞんざい、tụi は南中部・南部の口語と説明しています。bọn mình は北、tụi mình は南。単体の bọn は突き放した響きになることがありますが、bọn mình / bọn tôi の形なら友達同士のごく普通の言い方です。

一行で決める

  • 店員・駅員・ホテルのスタッフに向かって言う「私たち」→ chúng tôi(相手はグループの外)
  • 一緒に行動する相手に向かって言う「私たち」→ chúng ta(相手はグループの中)

旅行中の会話は圧倒的に前者が多くなります。

場面別の使い方(旅行シーン)

レストランで人数を伝える: Chúng tôi có bốn người.(チュン トイ コー ボン グオイ) =「私たちは4人です」。có は「〜がいる/ある」。入口で人数を聞かれたときの定番の返しです。ここで chúng ta と言ってしまうと店員まで食事に加わることになるので、chúng tôi の出番です。

自己紹介で: Chúng tôi là người Nhật.(チュン トイ ラー グオイ ニャット) =「私たちは日本人です」。市場やカフェで話しかけられたとき、これひとつで会話が始まります。

予約済みだと伝える: Chúng tôi đặt bàn rồi.(チュン トイ ダッ バン ゾイ) =「私たちは席を予約しました」。đặt bàn が「テーブルを予約する」、rồi が完了を表す語。rồi の r は北部で「ゾ」、南部では巻き舌気味の「ロ」です。

説明が聞き取れないとき: Chúng tôi không hiểu.(チュン トイ ホン ヒエウ) =「私たちにはわかりません」。ひとりのときの Tôi không hiểu を複数にした形。黙って固まるより、これを言えば相手もゆっくり言い直してくれます。

相手を誘うとき: ここだけ chúng ta に切り替わります。Chúng ta đi thôi!(チュン ター ディー トイ) =「さあ行こう」。thôi は「もう〜しよう」と背中を押す語尾です。記念写真をお願いするなら Chúng ta chụp ảnh nhé!(チュン ター チュップ アイン ニェ) =「一緒に写真撮りましょうね」。chụp ảnh は「写真を撮る」で、相手を巻き込む場面なので chúng ta がぴったりはまります。

ミニ会話例

店員Mấy người ạ?(マイ グオイ ア)— 何名様ですか?
あなたChúng tôi có bốn người.(チュン トイ コー ボン グオイ)— 4人です。
店員Mời anh chị vào.(モイ アイン チ ヴァオ)— どうぞお入りください。
あなたCảm ơn chị.(カムオン チ)— ありがとうございます。

店員は自分を勘定に入れずに人数を聞いています。だから答えも chúng tôi。一方、同じ卓に着くガイドに「そろそろ行きましょう」と声をかけるなら Chúng ta đi thôi! です。相手が輪の内か外かで語が入れ替わるという感覚を、この対比でつかんでおくと応用が利きます。

ベトナム文化メモ

「聞き手を含む私たち/含まない私たち」を文法として区別する仕組みは、言語学で包括・除外の対立と呼ばれます。日本語にも英語にもない区別で、we という一語で両方をまかなう言語から見ると、ベトナム語は毎回どちらかを選ばされることになります。当人たちにとっては選択というより反射で、どちらを使うかを間違えると「あれ、私は入っていないの?」という違和感が即座に伝わります。

この対立が生きているのは、ベトナム語がそもそも人間関係を呼称で細かく分節する言語だからです。相手が兄なのか姉なのか年下なのかを一語ごとに背負わせる言語なので、複数形になっても「その輪に相手が入るか」を素通りできません。逆に言えば、旅行者が chúng ta を意識して使えたときの効果は大きく、「あなたも私たちの側」と言葉で宣言したことになります。現地で知り合った人と写真を撮るとき、乾杯するとき、chúng ta はそういう役割の語です。

もうひとつ知っておくと面白いのが、chúng ta の変わり種の用法です。Wiktionary は北部の口語として「you guys; y'all(お前ら)」の意味を挙げています。本来は自分を含む語なのに、話し手が自分を外に置いて相手の集団だけを指す使い方で、教師が生徒に、上司が部下に、というような場面で出てきます。旅行者が自分から使う語ではありませんが、聞こえてきたときに混乱しないよう頭の隅に置いておくとよいでしょう。

よくある質問

Q. どちらか迷ったら? A. chúng tôi を選んでください。旅行中に「私たち」と言う相手は店員・運転手・スタッフなど、こちらの輪の外にいる人がほとんどです。含めるべき場面で chúng tôi を使っても他人行儀に聞こえるだけで、意味を取り違えられることはありません。

Q. 「私たち2人です」はどう言う? A. Chúng tôi có hai người.(チュン トイ コー ハイ グオイ)と、数の部分を入れ替えるだけです。bốn(4)を hai(2)に置き換えれば人数はいくつでも作れます。

Q. chúng mình と chúng ta はどう違う? A. どちらも聞き手を含みますが、chúng mình のほうが親しくやわらかい響きです。Wiktionary は chúng mình を「familiar, respectful」と説明しています。友達・恋人・仲良くなった相手には chúng mình、初対面や改まった場面では chúng ta が収まります。

Q. mình だけで「私たち」になる? A. mình は基本的に一人称単数の「私」ですが、chúng mình / bọn mình / tụi mình のように複数化の要素と組んで「私たち」になります。旅行中は複数形のかたちで覚えておくのが安全です。

Q. 主語を省いてもいい? A. 省けます。人数を聞かれて Bốn người.(ボン グオイ)だけでも通じますし、実際そう答える人も多くいます。

あわせて覚えたい関連フレーズ

所属ハブ: 「お兄さん」はベトナム語で?Anh(アイン)の発音・使い方

本記事のベトナム語表記・声調・IPAは Wiktionary と Vietnamese phonology (Wikipedia) を主要出典として編集部が照合しました。運営者情報

発音音声は合成音声(Microsoft Edge TTS・ボイス vi-VN-HoaiMyNeural)で作成しています。