「ブンチャー」はベトナム語で?
Bún chả(ブン チャー)の発音・使い方
「「ブンチャー」はベトナム語で?Bún chả(ブン チャー)の発音・使い方」はベトナム語で
Bún chả
ブン チャー —「ブン↗・チャ↓」と、前を軽く上げてから後ろを低く落とす
ハノイの昼ごはんの代表格。注文は Cho tôi một suất bún chả(チョー トイ モッ スアッ ブン チャー)=ブンチャーを1人前ください。
「ブンチャー」はベトナム語で?Bún chả(ブン チャー)の発音・使い方
炭火で焼いた豚肉を、甘酸っぱいつけ汁の椀に沈めて、冷たい米麺と一緒に食べる。ハノイの路地で昼どきに立ちのぼる煙の正体が Bún chả(ブン チャー)です。フォーと違って「一杯の丼」で完結しないぶん、頼み方にも食べ方にも少しコツがあります。この記事では、通じる発音と、店先で言えば席に着ける注文フレーズ、そして皿の上で何が起きているのかを整理します。
現地の人に伝わる発音のコツ
bún は Wiktionary のハノイ発音表記で [ʔɓun˧˦]。末尾の ˧˦ がサック声調(上げ)なので、「ブン」をすっと尻上がりに出します。b は喉を軽く詰めてから弾く音で、日本語の「ブ」より輪郭がはっきりします。
chả は ả の声調記号、つまりホイ声調(下げ上げ)です。ハノイの表記は [t͡ɕaː˧˩] で、下がりきったところで止まる響きが目立ちます。カタカナなら「チャ」を低く落として置くイメージ。[aː] と長音なので「チャー」と少し伸ばします。前半を上げて後半を落とす、この高低差が bún chả のリズムです。
平坦に「ブンチャー」と読んでも、メニューを指させばまず通じます。ただし chả を上げてしまうと語として別物に寄っていくので、後ろは絶対に上げないとだけ決めておくと安心です。
北部(ハノイ)と南部(ホーチミン)の違い: 音の面では、サイゴンの発音表記が [ʔɓʊwŋ͡m˦˥ caː˨˩˦]。bún の語末が -ng 寄りになって唇も閉じるので「ブウン」に近く聞こえ、chả は下げてから上げ直す動きがはっきり出ます。料理そのものはハノイ発祥の北部料理で、南部の食堂で近い立ち位置にあるのは bún thịt nướng(ブン ティット ヌン)です。焼き豚肉と米麺という材料は共通ですが、南部はレモングラスやはちみつで肉を漬け込み、甘めのタレを麺に直接かけて混ぜて食べます。つけ汁の椀に浸して食べる bún chả とは、食べ方からして別の料理だと考えたほうが近道です。
注文フレーズ早見表
一人前を数える語は suất(スアッ)。Wiktionary は「(主に食べ物について)portion」と説明し、suất cơm(ご飯一人前)という例を挙げています。ブンチャーはこの suất で数えるのが基本です。
| フレーズ | 読み | 意味 | 音声 |
|---|---|---|---|
| Cho tôi một suất bún chả | チョー トイ モッ スアッ ブン チャー | ブンチャーを1人前ください | |
| Cho tôi hai suất bún chả | チョー トイ ハイ スアッ ブン チャー | 2人前ください | |
| Cho tôi một suất nem cua bể | チョー トイ モッ スアッ ネム クア ベー | カニの揚げ春巻きを1皿 | |
| Cho tôi thêm bún | チョー トイ テム ブン | 麺を追加してください | |
| Ít cay thôi | イッ カイ トイ | 辛さは控えめで | |
| Tính tiền | ティン ティエン | お会計 |
Cho tôi 〜 は「私に〜をください」の万能形で、数と品名を差し替えるだけで注文が成立します。数が2つ以上なら suất の前の数詞を hai(2)、ba(3)と入れ替えるだけです。
場面別の使い方(旅行シーン)
店を探すとき: Quán bún chả ở đâu?(クアン ブン チャー オー ダウ) =「ブンチャーの店はどこですか」。quán が「店」、ở đâu が「どこに」。ホテルのスタッフに聞けば、たいてい歩ける範囲の一軒を教えてくれます。
入った店にあるか確かめる: Ở đây có bún chả không?(オー デイ コー ブン チャー ホン) =「ここにブンチャーはありますか」。có 〜 không? は「〜はありますか」の型で、品名を入れ替えればそのまま使い回せます。
注文する: Cho tôi một suất bún chả.(チョー トイ モッ スアッ ブン チャー)。一人前で麺・つけ汁の椀・肉・生野菜が一式そろいます。人数分の suất を言えば注文は完了です。
追加を頼む: 麺が足りなければ Cho tôi thêm bún.(チョー トイ テム ブン)。thêm が「追加する」です。ブンチャーの店は揚げ春巻きを併売していることが多く、なかでもハイフォン由来の四角い nem cua bể(ネム クア ベー) =カニ入りの揚げ春巻きは定番の相棒です。
おいしかったと伝える: Bún chả ngon quá!(ブン チャー ゴン クアー) =「ブンチャー、すごくおいしい!」。quá は「〜すぎる」ほどの感嘆で、口に出すと店の人の表情が変わります。
ミニ会話例
文末の ạ は相手を立てる語です。店員が付けてくるからといって、こちらが付け返さなくても失礼にはなりません。
ベトナム文化メモ
運ばれてくるのは、麺(bún)の皿、生野菜の皿、そして温かいつけ汁の椀です。椀の中で肉が浮いているので一瞬スープに見えますが、これは飲むものではなく nước chấm(ヌォック チャム)=つけ汁。Wiktionary は nước chấm を「ベトナム料理で使う、塩気のある薄いつけだれ全般」と定義しています。ブンチャーのそれはヌクマム・酢・砂糖・にんにくを合わせたもので、ハノイでは青パパイヤ(đu đủ xanh)を薄く切って入れ、食感と酸味を足すのが古くからのやり方です。
肉は2種類あります。ひとつが chả viên(チャー ヴィエン)=肩ロースをたたいて胡椒・ヌクマム・エシャロットで漬け、平たく丸めて焼いた団子。もうひとつが chả miếng(チャー ミエン)=バラ肉を薄く切って漬け、網や竹串に挟んで炭火であぶったもの。Wiktionary が chả を「肉や魚をひき肉や刻み身にして平たく焼いた/揚げたもの=patty」と説明しているとおり、この2つが皿の主役です。店によっては注文時にどちらか選べます。
食べ方は決まりきったものがなく、麺を椀に入れて浸してもいいし、麺を箸で取ってつけてもかまいません。生野菜は tía tô(シソ)、xà lách(レタス)、húng(ハーブ類)などがまとめて出てくるので、好みでちぎって椀に落とします。卓上には刻んだ唐辛子(ớt)とにんにく(tỏi)が置かれていることが多く、辛さは自分で足す方式です。もともとの味付けは辛くありません。
そしてブンチャーは昼の料理です。ハノイの人は昼どきにこれを食べるものと決めており、昼の営業だけで店を閉めるところも珍しくありません。夕方に探し歩いて空振りしないよう、予定は昼に寄せておくのが確実です。
有名なのは2016年5月の一件でしょう。訪越したオバマ元大統領がレー・ヴァン・フー通りの Bún chả Hương Liên に立ち寄り、料理人のアンソニー・ボーディンとブンチャー2人前とビールを分け合いました。二人が座った席は器やビール瓶ごとガラスケースに納められ、今も店内に残っています。以来この店は「オバマのブンチャー」として観光の目的地になりました。
よくある質問
Q. 一人前は必ず suất? A. 北部の店ではまず suất です。南部では同じ「一人前」に phần(ファン)を使うこともありますが、bún chả 自体が北部料理なので、この語に関しては suất で通ります。数が伝われば指で示しても構いません。
Q. chả viên と chả miếng はどちらを頼めばいい? A. 迷ったら何も言わずに一人前を頼んでください。多くの店は最初から両方を椀に入れて出します。どちらか一方だけにしたいときだけ、名前を伝えれば通じます。
Q. 辛いですか? A. 基本は辛くありません。辛さは卓上の唐辛子で各自が足します。あらかじめ控えめにしてほしいときは Ít cay thôi(イッ カイ トイ) と伝えておけば安心です。
Q. つけ汁は飲んでもいい? A. 飲む人もいます。フォーのスープほど量はありませんが、麺を浸したあとの椀に残った汁をすする人は珍しくありません。行儀の問題にはなりません。
Q. ベジタリアンでも食べられる? A. 焼いた豚肉が料理の中心なので、ブンチャーとしては難しいところです。精進料理を出す chay の店を探すほうが早く、その場合は別の麺料理になります。
Q. フォーとどちらを食べるべき? A. 時間帯で決めるのが実用的です。フォーは朝から夜まで食べられますが、ブンチャーは昼が本番。ハノイに滞在するなら、朝はフォー、昼はブンチャーという組み立てが自然です。